冬休みが終わって学校が始まりました。
休み前と比べて変化があるのか生徒たちの様子を観察する期間もあります。
セッションで用いられたテディーベアのクッキー型抜き
心を紐解くアート作り:プロセスを大切にする
『心のアート・ワーク』の
カナダBC州公認アート・セラピスト&同州公認心理カウンセラー
上原英子です。
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私は2000年にカナダ赤十字の児童虐待防止プログラムの
プレゼンター:Respect Edとしてトレーニングを受け、
各中学校でプレゼンをしていました。
児童虐待の種類は、身体的、感情的、性的の3つ
感情的な虐待は、児童虐待のどんな分野にとっても
虐待の礎になっています。
上記の中で最も扱いが難しく心身の傷が深いのが性的虐待。
日本では性的虐待は男性⇒女児のイメージが強いでしょうね。
北米では男性⇒男児の性的虐待も頻発しています。
D君は昨年の7月にカナダ東部から引っ越してきて、9月から
このプログラムに通っています。
13歳にしては身体が小さく、10歳前後にしか見えないD君。
先生や私に対しては挨拶をしたりいい子にふるまっています。
でも、D君には二面性があると、他の生徒からの評判は最悪。
私もそのことはセッションを通して感じ取っていました。
今回のセッションでは、プレイ・セラピーを用いてみました。
さまざまなフィギュアを用いて遊んでみると…
フィギュアを動かすのは得意。
でも、そこからお話しを展開したり、それぞれのキャラ役になって遊ぶのは、
いまいちの様子。
D君の家は裕福で、スケボーのブランド物ジャケットを着ています。
世界有数のリゾート地を訪ねたことがあるそうで、金銭的には恵まれています。
でも、彼の絵の描き方に口唇期の欲求が満たされていない表現が。
赤ちゃんの時に保護者としっかり愛着関係が築かれていないのでしょう。
↓
感情面で口唇期に満たされなかった名残りがあり、
情緒面の発達が遅れているように見受けられます。
D君が手にしているピンクの物体は、スェーデン生まれの
Kinetic Sand
このキネティック・サンドは、粘土のように団子状にできたり、
ナイフで切ることもできるのです。
持ち上げると砂のようにホロホロっと崩れます。
http://ggsoku.com/cul-on/kinetic-sand/
生徒からリクエストがあって購入したこの
キネティック・サンドは、とても人気があります。
D君は喜んで砂遊びを始めました。
D君は平たく伸ばした生地にクッキー型でテディーベアを抜きました。
それを逆さに掌に載せて傾けると、
砂が崩れて頭の部分が千切れて落ちていきました。
D君「あ~っ、頭がおっこちた。
打ち首にされたみたいだ~!」
私「ほんとだ~頭がまっさかさまに落ちた!」
D君はますますハイになって、この作業を繰り返しました。
遊んでいる様子はまるで3歳児のようです。
D君「ボクはこの作業をやらなきゃならないんだ!
頭と身体を切り離して、別々にしなきゃ。」
D君は、セッションの時間が終わるまで、何体ものテディーベアをクッキー型で抜き頭と身体部分を分けて陳列しました。
この強迫観念的な作業は、D君が性的虐待を受け続け、
頭と身体が切り裂かれた状態だと訴えているように見受けられました。
以前は多重人格と呼ばれた解離性同一性障害の発症は、拷問など耐え難い痛みを伴う体験による強い精神的ストレスを受けています。
私は生徒に精神疾患に関する診断は下しません。それでも、セッションで強い印象を受けた生徒の行動は担任の先生に報告しています。
D君は自分の心の状態を、頭と身体が切り裂かれた状態だと遊びを通じて訴えていたのです。
実年齢に見合わない子供っぽさや、大人を歓ばそうとする行動は、彼が性的虐待から生き延びるために表れたとスキルだと考えると符号が合います。
D君に限らず、生徒は虐待の可能性が見られるアート作りや遊びをしても、事実を告白することはまずありません。
私はセラピストとして彼と関わっているので、
いつ、誰に、どんなことをされたのか、また、現在はどうなのか、
という
生徒の告白を誘導していると感じられる可能性がある質問をすることは禁じられています。
早速、担任の先生このセッションの模様を報告。
親御さんから、D君が子どもの頃に性的虐待の被害を受け、2・3か月前にも同じようなことが起ったらしいと聞いていた担任の先生は、
「英子のセッションで彼の身の上にあったことが
再現されたので、彼の保護者と話し合い事実と照合する機会を持つことにするよ。
よくやってくれた!」
私のセッションでのD君の行動に対する発見を、
このように認めてもらえて嬉しいです。
そして、このような形で虐待防止に
一役担うことができて本望です。
D君の身辺の安全が確立されることを
願って止みません。
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