カナダに住んでいるにも関わらず、
今冬は暖かい冬を満喫しています。
おもちゃの恐竜の気持ちは?
「もう、たくさんだ~!」
心を紐解くアート作り:プロセスを大切にする
『心のアート・ワーク』の
カナダBC州公認アート・セラピスト&同州公認心理カウンセラー
上原英子です。
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今回はJ君シリーズ3を綴ります。
シリーズの1・2は以下をご覧ください。
10/28/15 【J君1:世界一のダメ人間】
http://kokoronoartwork.blogspot.ca/2015/10/102815.html
11/4/15 【J君2:対人関係音痴って?】
http://kokoronoartwork.blogspot.ca/2015/11/11415.html
J君(8歳)は数学は天性的にできるが、他の面で幾つかの発達障害の症状が。
彼は特に感情の制御に問題がある。
自分が気に入らないと癇癪を起す。
↓
それを先生たちに指摘されると激怒する。
↓
悔しくて泣き崩れて別室送りになる。
J君とのセッションは初回から破壊的な感情の嵐。
台風の目の存在の彼なのに、 自分は被害者だと信じ込んで止まない。
一人も友達がいないJ君は、友達が欲しくて仕方ない。
でも、自分のやり方を押し付け、威張り散らしたりするので友達ができない。
それは認めないので、J君はいつも被害者。
悪いのは周りの人。
プレイ・セラピーにもその様子が現れる。
3つのフィギュアを繋げて、
J君「友達だから、いつも一緒にいる」
それぞれが自由でないと、やがて決別するのでは…
そんなJ君の自己評価はとても低い。
J君「自分なんか死んでしまった方がいいんだ」
担任の先生にそう漏らしたという。
私とはこんな会話を交わした。
J君「注意欠陥多動障害がある人は、いつも不安に
駆られているんだって知っていた?」
私「(知っていたけど知らないふり)ふぅ~ん、そうなんだ」
J君「僕は注意欠陥多動障害があるから、
いつも不安に駆られているんだ」
私「それはとっても大変そうね。どんな感じなの?」
J君「自分なんか死んでしまった方がいいって感じる時もあるよ」
最初は私の前で荒れ狂うばかりのJ君だったけど、
この頃、こんな心情を吐露するようになってきた。
彼なりに私と関わっていく中で、
「この大人は信頼して自分の気持ちを伝えられる」
そう感じて少しずつ心を開いていったのだろう。
難しい言葉を使うこともあるJ君だが、遊び方はとても幼い感じ。
感覚的な過敏/鈍感さのある発達障害の生徒は手でものを触りまくることも。
そんな生徒たちに人気なのがこちら。
折り紙で巻貝を折って、そこにキネティック・サンドを
アイスクリームに見立てて載せてみたJ君
これはスウェーデン生まれの不思議な砂
「キネティック・サンド(動く砂)」
粘土のように団子状にできたり、
ナイフで切ることもできるのです。
持ち上げると砂のようにホロホロっと崩れます。
http://ggsoku.com/cul-on/kinetic-sand/
生徒に人気の口が開いている恐竜
J君はこれにキネティック・サンドをどんどん詰め込み始めた。
私は彼がどれだけ砂を恐竜の口の中に詰め込むのか見守っていた。
私「ずいぶんたくさん入ったね。
この恐竜は今、口がきけないけど、
何て言いたいのかな?」
J君「もう、たくさんだ~!」
対人関係音痴で人との機微が全く分からず、
親分風を吹かせては嫌われているJ君。
彼にとって人との関係は、わけわからなくて、
もう、たくさんだ~なんだろう。
私はJ君の代りに彼に友人を作ってあげることはできない。
対人関係音痴なJ君は自分の声のトーンを知り、
周りとハーモニーを奏でる術を自分で体得していくしかないのだ。
手で感触を感じるのが好きなJ君は色鮮やかな
プラスティシーン(粘土)で何か作り始めた。
J君「スーパーマリオのマッシュルームを作る」
私「いいね!でも、今日はあと5分でおしまいよ」
J君「じゃあ、ぼくのこと手伝って、茶色の粘土を
渡してもいいよ」
私「・・・?
私が手伝いたいかどうかは、私が決めるから。
今の命令口調だったら、手伝いたくない~」
J君しばし考えて
J君「あと5分しかないので、粘土を渡すのを
手伝って下さい」
私「いいよ、私が手伝ったら早く仕上がると思ってたよ。
じゃあ、手伝うね」
このようなやりとりから何かを学んでいるJ君。
J君が作ったスーパーマリオのマッシュルーム
注意欠陥多動障害を持っていて、行動が衝動的なJ君。
以前、J君は新しいおもちゃを探して、
私のバッグをやさがししようとしたことがあった。
私「それは私のバッグで、勝手に中を探られたくない」
J君「新しいおもちゃないの?」
私「そういう時はいきなり行動を起こす前に、
先に言葉で訊いてほしいわ」
J君「…」
この時、J君は何でこんなことを言われるのか?だったようだが、
次に新しいおもちゃを探したい時に手が出る前に私に尋ねた。
J君「新しいおもちゃないの?」
彼は私との関わりから確実に
対人技術を学んでいる!
彼が人との関わり方を学んでいく道のりは
長そうだけど、
私は歩むに値する道程だと確信している。
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