2014年2月28日金曜日

2/27/14 【自己統制のニーズと個々のタイプ】

私が代替教育プログラムの生徒にアート・セラピーの個人セッションを始めて7年目。大学院の臨床実習期間を入れると、もう9年間もこの学区域で働いていることになります。

代替教育プログラムの生徒たちは問題行動があり、自己統制が難しい:衝動性の抑制が効かない、不安に襲われる、感情が先走るなど。

今日、受講した 『自己統制できる子どもという講座は、この学区域の主催。お子さんに関わっている大人が、まず、自己統制を目指し、お子さんたちに良い影響を与えていこうという趣旨なので、私も自己統制について学ぼうと参加しました。
中学校の体育館で行われた講座には、50名以上参加者が集まっていました。
講師のローラさんは、理学療法士、ヒップホップの先生であり、二年前からこの学区域で自己統制法の講師を担当。体育館には(スクリーンの上部)カナダとBC州、両方の旗が掲げられています。
人間がストレスを感じるきっかけになるものを二分類すると:
1.基本的な欲求の欠如と、2.感覚的なもの。

1.基本的な欲求:睡眠、水分、食べ物、エクササイズ、新鮮な空気、他者との関わり。

2.感覚的なもの:騒音、閃光、散らかった状態、臭い、感触、コンピューターをしている時間、糖分過剰摂取など。

まず、自分が何にストレスを感じやすいかを認識できることが大切。そして、自分はどんな自己統制のニーズがあるか探ってみることでストレスに曝され続ける状態から脱することができる。 

以下の7項目の自己統制のニーズ、あなたはどれでしょうか?
口を使うことで自己統制しやすいタイプには、ガム、ストロー、おしゃぶりのような笛、鉛筆の後ろに付けて噛むものなどがある。

物に触ったり手遊びで自己統制しやすいタイプには、さまざまな感触の教育玩具や組み立てるタイプのチューブや立体もの。

視覚的感覚を刺激することで自己統制しやすいタイプには、色や素材を用いて視覚刺激を促すもの。

聴覚が発達していて自己統制しやすいタイプには、騒音の遮断の耳あてや、場合によってはipodなどで環境音楽などを聴く。

ここにはなかったが、 嗅覚が発達していて自己統制しやすいタイプには、ラベンダーなどの心が落ち着くアロマを用いることも。

以下の2項目が自己統制するのに最も有用である人口が多いとされている。それは…
人間は動くことによって自己統制しやすいので、椅子のクッションを可動式のものにしたり、座っている間に脚に力を入れられるように椅子の脚にラバーを巻くこと効果がある。

そして、もっとも自己統制に必要なのは…
人とのつながりなのです。
信頼できる人との関わりは、人間が自己統制する礎なのです。
 このように可動性のある用具を使うことで自己統制しやすくなるんだそうです。
不安や落ち着きのなさは、身体に荷重をかける方法も効果的。重しを肩や腰に巻き付けたり、重りの入ったベスト着用の方法もある。
自己統制に必要なもののディスプレイを興味津々に見て歩く参加者

あなたは何を用いたら自己統制しやすいでしょうか?

いろいろ試してみて、ご自分に合った方法を身に付けられると、ストレスも怖くなくなりそうですね。

2014年2月20日木曜日

6/18/13 番外 表現芸術心理療法のための心のケア勉強会 主催N-CAT 豊島区「がんばれ!子供村」

遅ればせながら、2013年5~7月に行われた日本でのアート・セラピーの活動を綴っていきます

6/18(火)表現芸術心理療法士のための心のケア勉強会 
主催:N-CAT 会場:豊島区「がんばれ!子供村」


今回のワークショップを開催して下さったN-CATとは、Network of Creative Arts Therapistsの略。表現芸術心理療法士:アートセラピー、ダンス/ムーブメントセラピー、ドラマセラピー、ミュージックセラピー、表現アーツセラピー。これら5つの芸術療法を海外の研究・教育機関で学び、実践している専門家たちの集まりです。

N-CAT http://n-cat.jp/wordpress/
 池袋駅から徒歩10分くらいの会場「がんばれ!子供村」
仕事帰りに駆けつけて下さった方が多く、前橋から遠路遥々いらした方も!  

まずは他者紹介ゲーム。相手をインタビューして、内容を絵で描きます。そして、相手に成り代わって描いた絵を見せながら、他者紹介をします。
  
ワークショップの最初のエクササイズは、4つの図形から好きなものを一つ選び、その図形からイメージを作成してみました。

これはカナダの就活講義の中で、自分の特性を知る目的で行われているもの。皆さん、熱心にイメージを形にしていました。
どんなイメージが描かれるのでしょうか?

二番目は、アドラー派のセラピスト、コットマン博士による、優先的なパーソナリティー要素について。4つ動物から好きなものをひとつを選び、描き、その特性を語るエクササイズ。

同じ動物を選んだ人同士でグループになり、一緒に作業しました。どんなところがセールス・ポイントなのかを発表する場では、笑い声が上がっていました。最後は、グループ全員に自分のイメージ画を描いてもらうエクササイズは、短い時間なので、直感で描く練習にもなりました。

同業者の皆さんにワークショップの感想を伺ってみると…

「ユング心理学の勉強が多かったので、アドラー心理学を取り入れたワークショップ、すごく、すごく、おもしろかったです」

「自分のアプローチと違うやり方のグループ・ワークに参加してみて、いろいろな気づきがありました。今日、学んだことを、自分のグループでも活かしていきたいです」

「他者のイメージを描くエクササイズでは、本質に近いものがあったり、他のメンバーが描いたものと共通性のあるイメージがあったりして驚きました!」 

「いつも自分がファシリテーターとしてグループ・ワークを行っているので、他のセラピストのワークショップに参加して、参加者としての気持ちを体験できてよかったです。心のケアについて再考する機会になりました」
日本でセラピストや対人のお仕事などで活躍している皆さんとのショット。

今度は、自分が他の表現芸術心理療法士の行うグループ・ワークに参加してみたいです。また、カナダでの臨床体験を取り入れたアート・セラピーのワークショップができたら嬉しいです。

2014年2月17日月曜日

2/15/14 【死ねっ!殺してやる~】


The Mandella Projectは私の住んでいる町のユース:8-12歳、13-17歳のための放課後のアクティビティーのプログラムなどを運営しています。

The Mandella Project:http://youthpartners.ca/wordpress/mandella-2/
 私が担当しているのは毎木曜日の放課後のArt Explosion:芸術は爆発!のクラス。対象年齢は8-12歳の女子。

Art Explosionとは?

A few of the reasons ART has value for you/your child
アートがあなたと子どもにとって価値がある理由は・・・


►learning to think creatively, with an open mind
オープン・マインドで創造的に考えることを学べる。

►practicing problem-solving skills, critical-thinking skills, and art-making skills
問題解決方、批評的な考え方そしてアート制作の技術が学べる。

►discovering that there is more than one right answer, multiple points of view
一つ以上の正しい答え、幾つもの見方があることを発見できる。

►learning to collaborate with others
他者との共同作業の仕方を学べる。

►introducing to cultures from around the world
世界中からの文化を紹介してもらえる。

►Even with physical, emotional or learning challenges, can experience success in the arts
身体・感情的、また挑戦することを学ぶことでアート制作の成功体験ができる

►Arts build confidence - there is not just one right way to make art,therefore everyone can feel pride in his or her original artistic creations

アート制作によって自信が持てるようになる。
アート制作はたった一つの正しいやり方があるわけではないので、自分なりのアート作品を誇りに感じられる。


こんな体験をしてもらえたら、と私はこのプログラムでアート・セラピストとして働いています。

今回の本題に入ります。 

大抵の大人は、大人としての責任やストレスを感じると、遊んでいる子どもを見て自分の子ども時代の楽しかったこと思い浮かび、

「子どもはいいよね~無邪気に遊んでいられて」

なんて言ってしまいがち。

本当にそうでしょうか?

子ども時代は養育者を含む環境によって大きく作用されます。子どもが自分の意志によりコントロール状況はほとんどありません。

多くの養育者は子どもに良かれと子育てをしていることでしょう。でも、さまざまな事情により、子どもにとって適切な行動を取ったり、環境を維持することができない場合もあります。

楽しく遊んでいるように見えるお子さんの心の中では家族への不安、学校での級友との葛藤、環境による欲求不満などが渦巻いていることもあります。

このプログラムには、家庭に事情のあるお子さんがやって来ることが多く、遊びやアート作りを通して、彼女たちの心のありようが表われます。

お絵かきが大好きなSちゃんは、大きな紙に描きたいと模造紙に
絵を描くことを楽しんでいました。

真ん中っ子で順応性に富むSちゃんは、どんな子がグループにいても、うまく遊べる適応のよいお子さん(そうではないタイプのお子さんもたくさんいる)

Sちゃんは、私の持参したペン立てに見たことのない道具を発見し、手に取ってみました。
段ボールや缶に穴を開けるために使っている目ぬき

カナダでは大工道具コーナーでもあまり見掛けないものなので、Sちゃんは物珍しかったようです。そして、こんなことを始めました

目ぬきを紙に刺して切れ目を入れて喜んでいたのですが、それが高じてテーブルに敷いておいた紙だけでなく、冊子なども切り裂き出しました。

「死ねっ!殺してやる~」

死ねっ!死ねっ!死ねっ!」

「どうだ!息の根を止めてやった~」

何度も目ぬきを振りかざし、一心不乱に切り裂いています。 
その眼はマジでした。
まるで、日頃のうっ憤を一気に晴らしているかのようでした。

私は彼女の横で合いの手のように、笑いながらこんな言葉を繰り返しました。
 
「そうだ、死ねっ!殺してやれ~」

死ねっ!死ねっ!死ねっ!」

「息の根が止った~やっと殺した!」 

私の合いの手でより気分が高揚したSちゃんはしばらくこの作業に没頭し、自然と手を止めました。
 「私を入れて記念撮影して!」
 この大惨状を喜んでいるかのような笑顔のSちゃん。

普段、いい子にしているお子さんほど、心的ストレスが溜まっていることが多いようです。
自他に危害が及ばない方法で発散できると気分がすっきり!

大人であり、監督者役の私がこの場を見守り、容認したことで安心してこの作業を果たすことができたのです。
この後は自分で選んだ木の箱を一部塗って、大切そうに持ち帰りました。 

彼女にとってこの箱はどういう意味を持つようになるのでしょうか。

 



2014年2月9日日曜日

2/7/14 【先住民族の今昔】

教職員の研修日に開催された『先住民族の今昔』の研修に参加しました。
ファシリテーターのM先生と私は先住民族の生徒が多いこの小学校で2008年からアート・セラピーのグループ・セッションを開催していました。

正面玄関には先住民族アートのレリーフが掲げられています。
校内には先住民族アートが掲示されていて、学校の方針にもメディソン・ホィールの象徴が用いられています。

開会して参加者が輪になった会場にはこの地域の先住民族のエルダー(シニア)が招待されていて、レジデンシャル・スクール(カナダ政府による先住民族のお子さんの寄宿学校への強制収容)の話や、代々に渡る不遇な境遇の記憶を共有しました。語る者、聴く者双方が涙ながらにこの場を共にしました。 

参加者はカナダの先住民の歴史を体現するエクササイズを体験。
 先住民族の柄の毛布を床に置き
 床に敷き詰めたところ。まるで合宿の雑魚寝状態(笑)
ファシリテーターが先住民族が住んでいたカナダの土地をさまざまな理由を付けて没収していきます。
 床に毛布がなくなった所は立ち退きさせられた部分。
自分の土地がどんどん減らされて、立っているスペースのみになった状態。

クラスでこのエクササイズをすると、生徒たちは自分の土地(毛布)が奪われていく過程でさまざまな感情を味わい、 先住民族の問題を真剣に取り組むようになる例が多いそうです。
ランチの後のエクササイズは、参加者が輪になってレジデンシャル・スクールのブロックを手にして感覚的に自分がブロックに成り切るところから始まりました 
100年以上に及んでレジデンシャル・スクールでの出来事を目撃してきたブロックを触ると、悲しみ、無力感、怒り、失望などの感情が胸に突き上げてくるかのようでした。

ここで紙を小冊子にして、1ページごとに自分がこのブロックとなり質問に答えていって、6ページの本を作成しました。

先生方はこれを教室に持ち帰り、先住民族問題の教材として用いるそうです。
最後のプロジェクトは木片に先住民族の文化を学んだことにより自分がモザイクのひとつとなって表現するモザイク・プロジェクトの実習。

私の作品のクローズ・アップは…
このメディソン・ホィールの内側の4色:白:白人、黄色:黄色人種、赤:先住民族、黒:黒人。これらの人種の統合を調和を象徴としています。

真ん中に『愛』を書き込みました。
裏面には桜の花が太陽の光を燦々と受けている図にしました。

閉会の儀として先住民族の血を引く先生方によるドラムと歌の演奏が行われました。

鹿の皮革で手作りしたこのドラムの音は暖かく、心臓の鼓動のような響きに感じられました。

私がセッションをしている生徒の中にも先住民族のお子さんがいます。

今回自分が学んだ知識と体験した感情を今後の臨床に活かしていきたいです。





 

2014年2月7日金曜日

2/5/14 【研修会:感情的統制:行動規制を超越】



私が住むカナダBC州には発達障がいのお子さんのケアをするア教職員や専門家などのための

BC州自閉症関連障がいアウトリーチ・プログラム(協会)」があります。

私は2011年にこの協会の「自閉症スペクトラム症候群の基礎知識と実践的方法」のコースを受講し、修了証を修得しました。

2013年に受講した同協会主催の「What’s New in Asperger’s Syndrome?:アスペルガー障害についての新しい発見、Executive Functioning & Emotional Regulation:高等な機能と感情的統制」の続編でした。

今回はEmotional Regulation Beyond Behavioral Management:感情的統制:行動規制を超越」を学んできました。

発達障がいの方に対してだけではなく、一般の方にも応用できる要素が網羅されていて素晴らしい内容でした。

BC州の自閉症障がい(他の発達障がいを含む)への理解を深めることを主旨としたアウトリーチをする協会が開催する講義なので、リサーチ結果や関連資料の情報量も豊富です。

 現在、BC州ではSocial Emotional Learning:SEL:社会性と感情の学びを促進しており、その内容は、

Self-Awareness:自己への気付き
Self-Management:自己統制
Social Awareness:社会への気付き
Relationship Skills:人間関係の技術
Responsible Decision Making:取捨決定への責任

この要素を発達させていこうというもの。

2時間の講義は内容が濃く、英語でのスピーチを書き取るのが大変でしたが、収穫の多い研修会でした。

今後も専門家としての知識を深めていくこのような研修会に自発的に参加していきたいです。